文学モチーフとしての茶道―三島由紀夫『金閣寺』を題材として―
1.はじめに
2.場面の解説
3.テクストの分析
4.まとめ
5.註
平成廿年九月廿四日 執筆 Y. Wakazawa.
戦争末期のある日、「私」は知人の鶴川と南禅寺へと赴く。我々は色鮮やかな天井画に魅せられる。飛翔する天人や半鳥半女、虹のような鳳凰の絵を「私たち」は見てまわる。御堂を出たとき、「私はどこやらに何か美しい小さな色彩の渦のようなものを感じていた」。道を隔てた天授庵の座敷の中に、若い長振袖を着た女が座っているのを見つけたからだ。さらに奥から軍服の若い陸軍士官が現れ、女は薄茶をすすめる。男は茶を喫せず、緊張した時間が流れる。急に女は白い乳房をあらわにし、士官は茶椀を女の前に捧げ持つ。茶の中に白い乳が流れ込み、士官はこれを飲み干す。いつのまにか男女は座敷から姿を消し、広い緋毛氈だけが残された。